だから社長は間違える!?
私が購読している日経ベンチャーの5月号に特集として掲載されていました。
「だから社長は間違える」~経営者が犯す判断ミス“3つのパターン”~を紹介します。
判断ミスをなくすには、冷静に論理的思考をせよ、とよく言われますね。
しかし現実には、熟慮を重ねたはずの選択が裏目に出ることが少なくありません。
その原因は、決断をするときの心理面にあります。
社長さんも人間です。論理的にはこうした方が良いと分かっていても、なかなか決断できない社長さんは多いはずです。
なせならば、重大な局面になるほど不安や恐怖心が生まれ、物事をゆがんでとらえてしまうという心理面、いわゆる「決断心理のわな」が原因で普段はロジカルな社長さんが理解不能な経営判断をしてしまうからです。
私が顧問先の社長さんの経営判断に立ち会う際、この「決断心理のわな」の呪縛に捉われ、なかなか決断できない社長さん、決断する方向を間違えてしまう社長さん、この「決断心理のわな」の呪縛に嵌ってしまっているシーンによく出会います。いわば、自社について客観的に判断することができなくなっているのです。
さて、行動経済学の専門家に言わせると、経営者の判断ミスである「決断心理のわな」の原因は下記の“3つのパターン”に大別できるとの事です。
1、自信過剰になっている心理状態
2、萎縮してしまっている心理状態
3、思考停止してしまっている状態
それぞれ3例ずつの心理状態が照会されていますが、その中で私がよく直面するシーンをそれぞれ1つずつ列挙しみます。
1、自信過剰になっている心理状態でよく見受けられる現象は、「埋没費用効果」
ある事業を継続するか断念するかを選択する局面で、それまでに注ぎ込んだコスト惜しさに撤退を決断できず、ズルズルと続行してしまう。
社長さんは、自信満々だが、実は「こんなにカネを投入したのだから、ものにしなければもったいない」という損失回避の願望から、事業価値を過大評価してしまっている場合が多い。
この対処法として、
○継続、撤退を判断するときは、その事業に注ぎ込んだコスト、労力はいったん忘れて、客観的に判断する。
○事業の評価は「過去の苦労」ではなく、「将来に向けての費用対効果」で考える。
2、萎縮してしまっている心理状態でよく見受けられる現象は、「群集効果」
自分で考えて物事を判断するのではなく、マスコミの論調や周囲の意見に同調して判断を下すこと。周りと同じ戦略を取っていれば大きなミスはない!という希望的観測にもとづく心理状態です。
この対処法として、
○メディアの論調で極端なものは鵜呑みにせず、自分自身の判断力を発揮させる。
○業界内での評価や世間体でなく、「自社の存続」を最も重視しして決断を下す。
3、思考停止してしまっている状態でよく見受けられる現象は、「現状維持バイアス」
判断ミスをしたくない、という気持ちが強すぎて決断そのものを放棄し、現状維持をしてしまっていること。俗に言う「守りに入っている状態」
典型的事例として、キリンとアサヒのシェア争いがあげられています。
キリンは長く圧倒的なシェアを維持してきたが、1987年にアサヒが「スーパードライ」をヒットさせ、2001年には、シェアのトップの座を奪った。
それまで、キリンは「現状維持バイアス」から大型の商品開発をしてこなかったが、首位を奪われたことで「現状維持バイアス」が解けたキリンはここから反撃開始。「のどごし生」を始め新ジャンルの商品を積極的に投入し、06年にはアサヒと肩を並べるまでになっている。
この対処法として、
○決断を先延ばしにするときは、現状維持バイアスに陥っていないか確認する。
○外部の意見を採り入れるなど、決断プロセスの固定化を防ぐ。
さて、私は税理士ですが、税理士事務所の経営者でもあります。この「決断心理のわな」は、よく分かります。
事務所の経営者として考えた場合、決断する際の心理状態がその決断に大きく影響してくるものです。
やはり、私も人間なのですね。。。
この「決断心理のわな」を理解することで経営判断を誤らないようにしましょう。
2008年5月7日